院長ブログ

初ひとり登山(遭難の巻)(R6/7/4)

以前、ブログのテーマの希望があれば教えてくださいと呼びかけておいてせっかくお声かけいただいた方がいたのにそのままにしてしまっていました。ごめんなさい。

いろいろな声がありましたが、一番希望が多かった初ひとり登山(遭難の巻)について書いてみます。

いまから一年以上にはなるかな、と思います。

家族が皆、いろいろな用事だとかでいなくて僕ひとりとなった休日がありました。

書類仕事とか普段ならいろいろある仕事もたまたま前の夜までに終わらせることができていました。

前の夜に、明日はどうしよっかなー、料理を作ったり朝から長風呂したり、お酒のんだりとかもいいかもなあといろいろ考えてみましたが、ふと山にのぼってみようかしら、と思いつきました。

数年前(もう7-8年とかなるかも)に一度、義父に登山につれていってもらったことがありました。

そのころ、足のしびれとか痛みとかがしばらくつづく坐骨神経痛を患っていました。まったく運動していなかったころで座っている時間も長いのも原因かなと思っていてマッサージを受けたりいろいろしてもなかなか改善しなかったのですが、その登山のあと驚くくらいすっと症状が消えたのです。登山の際に自然に筋肉が延ばされてストレッチしているような感じになったのだろうと思います。登山自体も危険な感じもないよい山で気持ちよかった覚えがありました。

そんなよい記憶があったので、「そうだあそこに行ってみよう」と思いつきました。ほとんど一本道で迷うような道もなかったように感じたし大丈夫だろうと考えていたのですね。

その山は東諸県郡国富町にある釈迦ヶ岳です。「しゃかがだけ」と言います。山頂にある表記などは「釈迦嶽」とありますが案内板とかには「釈迦ヶ岳」書いてあります。登山道の手前には広い駐車場もあって、とてもきちんと整備されている印象です。

こののちにいろいろな山にも登ってみることになりますが、多くの登山道は入り口がわかりにくかったり登山道の入り口までの車での移動が道が細いとか難しいことも多いことを知りました。初めての1人登山で今から書くようにいろいろありましたが、この釈迦ヶ岳は今では僕が一番好きな山です。このあとも繰り返し書いておきますが決してこの山が危険な山だったり登山道の整備が悪かったりとかではなくこれから書くできごとはすべて僕の不準備等からの問題です。

さあどんなことがあったのでしょうか。ちなみに普段からブログにのせるためということでの写真は撮っていないのであんまり経過がわかる写真はありません。ご了承ください。

一応、天気はしらべておきました。当日朝は曇りで昼ころからすこし雨が降るかもという予報でした。

自宅から国富町の釈迦ヶ岳登山口付近まではだいたい40-50分くらいかなと考えておきました。

標高は830mで標準的な登山にかかる時間は登り2時間くらいで下りが1時間40分くらいとなっているので、朝7時半くらいに家をでれば8時半くらいからは登山して昼くらいには下山完了くらいかなと簡単に計算してみました。

念のためレインポンチョを用意してチョコレートとか簡単なお菓子と水筒は持っていきました。

登山口には予定よりすこし早いくらいに到着して8時すぎくらいから登山開始しています。ちなみに写真はありませんが法華嶽公園というところのすこし先に登山口はあります。法華嶽薬師寺というお寺が登山道の駐車場のすぐ手前にあります。日本3大薬師寺のひとつということですが失礼ながらそんなに立派ではないし大きくないけれどなあ。。。

正直なところ、えっ、これで「3大」とかに入るの?って思っちゃっていました。

最近、明治時代に行われた仏教弾圧の【廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)】についての本を何冊か読んだのですが、当時の廃仏の処置はとても広範囲で、かついろいろ大変だったみたいです。宮崎でもほとんどのお寺は取り潰されたり、縮小されたりしたようです。それで、どうもこの法華嶽薬師寺ももともとは結構規模が大きいものだったようだと知りました。まだまだ知らないことがいっぱいあるのだなと自分の無知を恥じているところです。知らないで物事を判断するのはいけないし恥ずかしいことですね。とても反省しました。もっともっともっと勉強しないといけない。もちろん医学のことも。

ちょっと話がそれかけました。

それはそうと、駐車したところですが、ちょっとこの時点で懸念が・・・

駐車場は広いんですが、車が僕の車しか無い・・・・・ あれっ?前来た時は結構車いたような記憶もあるんだけどなあ。まあ、いいか。。。

進もう。

5合目くらいまではゆるやかな坂道のつづきで順調に進んでいきました。6合目からは傾斜がきつくなってきてロープが張られているところもあり山って感じがしていい感じです。湿り気があるせいかキノコとかも生えていたりしてよいです。

不思議なきのこ かわいい

倒木にはびっしり苔が生えていてうまく写真には残せていませんがそこからまた新しい植物が生えていて素敵です。

などと、このころは周りを見る余裕もありましたね。

ところで8合目くらいからすこしだけ雨が降ってきました。ぽつぽつと降るくらいでまだ全然大丈夫です。

ここで、ちょっと脱線。「全然」のあとは否定文を使わないといけないじゃないか、正しい日本語を使え、と思われる方もいるかもしれません。しかし、いろいろ調べてみると実はそんなことはないみたいで明治時代あたりの文章でも全然のあとに肯定文という使用例がまあまあるみたいです。言語は生き物でその時代とともに使用方法は変わっていくようです。ら抜き言葉とかもたぶん10-20年後とかくらいには通常の使い方になってるのかもなあ。いい悪いとかではなくて。他には、最近【させていただく】という表現についての本を読んでみると面白かったです。便利な表現だけど使い過ぎは注意がいるなあと思いました。言語についての本も面白い。

登山の話にもどります。雨脚はすこしですが、風が強くて日も出ていなくて暗くて「びゅおー、ぶおー」って感じの風が吹いていてちょっと不安な気持ちがすこしよぎってきていました。

苔むした倒木  いいねえ・・・

登山の方自体はまあ順調で予定の時間よりだいぶ早く登っていけていました。

ただちょっと懸念が、、、。8合目から9合目の傾斜が強くて地面にはいつくばいながら登るようなところがすこしありました。あれっ?記憶ではそんなとこあったようにはないのだけれど。。。ちょっと小屋みたいなのが下の方にみえました。あれ?なんであんな建物があるのにそこを通らないルートなのだろう?とちょっと頭をよぎりましたが無事9合目にたどりついたので深くは考えませんでした。

で、無事山頂にたどりつきました。標準の登りの時間が2時間くらいのところ1時間20分くらいでした。

山頂と別に展望所というのが山頂から数分程度で行けるところがあると書いてあったのでそこも行ってみました。

山頂です。よかったよかった。
展望所です。よかったよかった。
展望所からの展望・・・・・
山頂からの展望、、、

山頂と展望所からの展望ですが。。。びっくりするぐらいまったく何も見えません。

ちなみに登頂まで誰にも会いませんでした。あれっ?

ちなみに登頂したあたりで雨がぽつぽつからすこし強くなってぱらぱらぱらというくらいになってきました。

まあでもあとは来た道を戻るだけだからまあ大丈夫だろうと思っていました。

さあ、下山。   ちなみにこれから先は写真を撮る心理的余裕がなくて写真は全く残っていません。

山頂が10合ですが、まず9合目が見当たらない。なんとなく下りの傾斜が強い感じがする。あれっ?

でもそんな迷うような感じでもなかったしなあ。。。と進んでいくと8~9合目くらいのところで下にみた小屋みたいなのがなぜか上の方に見えました。 あれっ? まあでも方向は合ってるんだろうとそのまま進んでいきました。

まあ危険な感じではないし人が通ったように見える道もあるし下っていけばなんとかなるんじゃないかな?と考えそのまま進んでいきました。とすると雨脚がだんだん強くなってきました。レインポンチョの出番です。よかった準備しといて。チョコもすこし食べました。さあ、元気だして行こう!

途中、野生の雉(キジ)さんに会いました。おお、きれい。しばらくするとどこかに行きました。

ちなみに今日、初めて会った虫以外の生き物です。さよーならー。

さらにさらに進むと小さい流れの川に遭遇しました。 あれ? 登りでは川とかなかったぞ。。。

完全に登りのときと違う道に来ていることにこの時点で、いままで否定したくて気づかないふりをしていた「迷ってる?」ということを認めざるを得なくなりました。天気はさらに暗く雨もしっかり本降りになってきています。

川に沿って降りていけばふもとに降りられるだろうと考えて川にそって進んでいきます。

もはやちゃんとした道はなくて木をつかみながらそろそろ降りていく感じになっています。木はちゃんと立っていると思ってつかんでみると立ち枯れていてさらにもう腐っているようで簡単に折れてしまうこともあり1~2メートルくらいざーっと滑ってしまうこともなんどもありました。なんか、どこそこ痛い。お尻打った。。痛い。

川に沿っておりてきたけどちょっと滝みたいな感じでちょっとした崖みたいになってる。危ないかも。ちょっと道かえないといけない。。。

暗いし、風も強いし道がわかんないしこわい。おなかもへったし足も痛いし。やばいかも。でもだいぶつかれたし、もう無理かもって気がすこしだけでてきちゃいました。

休憩しちゃおうかな、でも休憩すると立ち上がれなくなるかもしれない。。そういえば今日登山するって家族にも誰にも言ってきてない。このままここで気をうしなったりしたり動けなくなってもしばらくは気づかれないかも。

そんなとき考えてしまうのが翌日の診療のことで、たしかあの子が予約が入っていたなあ、大丈夫かなあ元気になってるかなあとか、帰れなかったらスタッフから患者さんたちに連絡してもらわなくちゃいけないなあとか目先のこまごましたことが頭に浮かんでいました。

でも、いつもそんなに大した診療してないし、うちじゃないとできないような特殊なこともしてないし、僕がいなくなってしばらくは受診先をさがしたりと迷惑をかけるだろうと思うけれど、僕が普段やっている診療は小児科医ならだれでもできるようなことしかしてないし、そのうち患者さんたちの混乱もすぐにおちついていくだろうしなあ、僕がいなくてもまあ大丈夫かな、とかちょっとネガティブな考えも浮かんできました(といっても普段から思っているようなことではあります)。

といっても、こんなことを考えたのはたぶん10秒くらいで、いやいやもうちょっと動いてみよう、と足をとりあえずとめないで進んでいきました。ちなみに携帯電話は持ってきていました。もうお気づきかもしれませんが電波は山の中では届きません。google mapを開いて現在地を調べてみましたが、山の中ということしかわかりません。山の中ではこれも意味をなさないのだと勉強になりました。なんとか空元気(からげんき)を出そうと、来るときに車の中で聞いていたwacciさんの「恋だろ」を周囲にだれもいなさそうだから大声で歌いながらあるいてみました。 「性別もー、年齢もー、家柄もー、国籍もー、外見もー、年収もー、過去も何もかもぜんぶー」とその辺しか歌詞覚えていないからエンドレスでそこだけ歌ってました。登頂から3時間くらい経過したところで、斜面をくだっていってるとなんと舗装された道路にでくわしました。そこがどこかはやっぱりmapでわからないのですが道路があるならこのままどこかにたどりつくはずと、一気に助かるという気持ちがでてきます。ひきつづき「性別も~、、、」とうたいながらあゆみを進めました。

途中、野生の鹿(シカ)に会いました。女の子ですらっとしたりりしい姿です。きれいだなあ。しばらく目と目が合ってお互い立ち止まっていましたが急に鹿は向きを変えて急な崖を駆け下りていきました。すごいかっこいい、いいものが見れたと感動。ちなみに今日あった虫以外の生き物で2頭目です。ちなみに登山開始から下山完了まで最終的に、この2頭にしか遭遇していませんでした。人には誰にも会っていません。ちなみに雨はもうこの時点でどしゃぶりといっていいような状況になっています。あと、懸念することとしては舗装された道路なのに車が一台も通ってこない。。。なんでだろう。まあ、なんとかなるだろう。

元気をもらったところでさらに歩みを進めると、、、、、、、、

え。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

繰り返しになりますが写真は残っていませんけれども、道路が土砂崩れで完全に寸断されていて道路に土砂が大量に載って小山のようになっています。そうかこのために車は通れないのか、納得納得。

思いもかけない事態が展開してきておもわず大笑いしちゃいました。

誰の言葉か忘れたし、正確な表現もちょっとちがうかもしれませんが、【ユーモアとは「~~だが、しかし」ということだ】と何かで読んだ気がします。いろんな大変なことがあってつらいときも、それを笑ってしまうセンスがユーモアなのだいう意味だと思います。誰かと一緒だったら笑えないけれど1人だから大爆笑しちゃいました。

ところで、さあ、どうしよう。降りてきた道を戻るとしてそんな元気はもはやない。じゃあ、、、この小山になっている土砂を乗り越えるしかないか。地盤はどうだろう。。。これすべると本気でやばいかも。慎重にのぼっていこう。。。

あっ、大丈夫そう。なんかアドベンチャー。ちょっと楽しいと感じてしまっていて、楽しめる余裕があるなら大丈夫かなと自分を評価することもできたので、そんな自分を評価することができる状況なら大丈夫かなと複雑な表現になりますがなんとか行けそうと元気がでてきました。かなりな高所恐怖症なので小山を登りながら崖下の方は見ないようにしながらゆっくり進んでいきます。ちなみに年々高所恐怖症はひどくなってきていて綾の大吊り橋はもう渡れないです。須木の吊り橋も厳しいです。

その小山を乗り越えて道路を降りていくとgoogl mapでちゃんとした道が近くにあるようにでてきました。ちなみに歩いてきた舗装された道路はのっていませんでした。でもそのちゃんとした道に行くには今あるいている道路から外れていかないといけない。結構な判断の分かれ道だなあ。まあいい。ここまでこれたんだからすこし行って、戻ってくることはできるはず。と考えて道路から外れていったところ、、、正解でした。来るときに車で通った道路にたどりつきました。やったー。助かったー(と本気でようやくこのとき思いました)。

ただ、だいぶ登山道入り口からは手前の方みたいで、そこから車を止めている登山道入り口までどうも4-5kmくらいあるようでした。道路ではあるけれど登り坂で、もう足がうまく上がらない感じになってきて一歩一歩ひざに手をつきながら歩いていきました。駐車場にとめてある愛車をみたときは涙がでそうでした。ちなみに駐車場には朝と同様で僕の車しか止まっていませんでした。どしゃぶりの雨は続いていて身も心もぼろぼろになっていたとこです。

さあ、帰ろうと思いますが、このまま終わるとつらい気持ちが強く残ってしまうのでもうひと踏ん張りして温泉に行こうと決意しました。

そこで選んだ温泉は小林市にある湯之元温泉です。泉質がすばらしい。

地理的な位置関係を御存じのかたは国富町から小林市の温泉って、遠くない?と思われるかもしれません。

その通り。1時間以上車でかかります。もうわけわかんない。

でもよかった。温泉につかって改めて助かったという気分になれました。

湯之元温泉  こころとからだを癒してくれました

家に帰ってからだのあちこち痛いとこを確認するとたくさんのすり傷がありました。幸い骨折れたりなどがなかったのでよかったのですね。

左下腿の傷
左足首あたりの傷
左親指も切れてます
何か刺さっていた足

まとめると登山に登り1時間20分くらいで下山には6時間ちょっとくらいを要しています。ちなみにこの日の歩行距離は山道ばかりで30km弱くらいでした。

もうこの山が嫌いになったかというとそんなことはなくて2週間後にはリベンジを果たして登山・下山ともトラブルなく、どこで間違えたのかを確認しながら無事に登山成功しました。その後も登山を繰り返してこれまでもう10回以上釈迦ヶ岳は登っています。大好きです。 最近はなかなか登れていないですけれど。

別の機会に上った山頂からの景色

ちなみに国富町にある川越酒造さんがつくる「川越」という焼酎は僕が好きな芋焼酎のベスト5に入るお酒です。

国富町すばらしい。

国富町にある川越酒造がつくる「川越」

最後に反省点をまとめると。

①下調べが不十分だったこと、経験が浅いのに天気をあまくみていたこと。

②道に迷ったかも間違えたかもとおもったときにひきかえさなかったこと。

③川に沿ってくだっていったこと。

④登山することを周囲に伝えていなかったこと。

などなどなどなどかなと思います。

とくにこのあといろいろ登山の本とか読むと②③は登山の原則みたいで、迷ったらそれまでかかった時間を考えても引き返すようにすること、川をくだるとたいてい滝や崖につながるので川をくだるのではなく、いったん上に向かっていくことで山の稜線にたどりついてそこから下の方をみて方向を確認するというのが大事みたいです。

繰り返しですが釈迦ヶ岳はちゃんと準備すればとても安全な山です。大好きです。

今回、結構しゃれにならない内容でした。怒られるかなと思ってしばらく内緒にしていました。

記憶にのこる初めて登山でした。助かってよかったねー。

院長 ゆげあきひこ

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